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Daigoro Yonekura
Daigoro Yonekura

作品自己解説


ヌラヌラとした質感、 シンプルな構図、 冷徹な筆致、 明瞭な立体感を映し出す陰影のモノトーン、 さらにそ れらの相乗効果から生まれる得体の知れない独特の存在感。 これが私の絵画作品の特徴です。 そして、 このような作品を生み出す制作方法もやはり独特です。

まず、 鏡面状に研磨したパネルの上に、 アクリル絵具を垂らします。 次に、 絵筆に見立てたシリコンシート を使って、 絵具を素早くヌチャヌチャと掻き回すように運筆します。 すると突如として強い立体感を伴う形象が 現れるので、 その瞬間を逃さず捕らえる。 その筆致は ( ほぼ ) 一筆書きで、 全体の描写時間は約 1 分、 形象が現れる瞬間は 1 秒にも満たない一瞬です (注 : 作品 Homerus (study) を除く。) 私はその一瞬を捕 らえ即応するために、 あえて 「頭に思い浮かぶ物」 が何もない空虚な状態から描写を始めています。

このような制作方法へと至った意図は様々ですが、 私の作品には 「イメージとは何か ?」 という絵画の基礎 となる 『謎』 が横たわっているように思います。 例えば一羽の鳥を思い浮かべる時、 その鳥は暗い脳裏に 一瞬にして現れます。 しかしその一方で、 鳥が現れる以前の脳内は何もない空虚にすぎません。 では、 そ の空虚とは何か ? そしてその空虚から鳥が羽ばたく刹那に何がもたらされたのか ? これら一連のイメージに関 する謎。 私の作品はその 『謎』 そのものを具現化したものだと考えています。 換言すれば、 私は 「頭に思 い浮かぶ物」 を描いているのではなく、 「頭に思い浮かぶ事」 その事自体を描いているとも言えるでしょう。

 

May. 20, 2017 Daigoro Yonekura  

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